ケーキの罪
甘いものが嫌いだ。
一口二口はまだ新鮮だから食べられるが、
三口目からはもう頭が痛くなる。
だから毎晩食卓に並び、私の餌となるケーキ達はフォークで
つつかれるばかりで完食されたためしがない。
今夜のケーキも白い。
いつもケーキを見ていて思うのだがどうしてこの食べ物は
こんなに飾り立てた姿をしているのだろう。
きらきらとフルーツは宝石さながらに輝いているし、
縁取られたクリームなどはまるでレースのようだ。
人は何の疑問も持たず、この食べ物のそんな姿を“美味しそう”
と言うけれど、美しいものを口に入れたいと願うのは赤ん坊と同じだ。
私がケーキを食べるのも、その容姿を愛するからに他ならない。
だからきっと一口二口食べてそれが崩れてしまうと途端に
食指が動かなくなってしまうのだろう。
贅沢が過ぎる、この食べ物は、
自らの罪に酔い痴れるように甘美な香りを漂わせ、
今日もショーウィンドウに並んでいる。
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